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2024年12月16日
横浜商科大学
久保輝幸准教授が医譚賞を受賞
久保輝幸准教授が、医譚賞を受賞されました。受賞および研究内容などについてご紹介します。
医譚賞の受賞と久保准教授の研究について
医譚賞は、日本医史学会関西支部が医学史研究に貢献する業績を称える学会賞です。今回、久保准教授が「牡丹?芍薬の研究」と『本草概説』の翻訳出版を理由に受賞されました。
『本草概説』は、著名な医史学者?岡西為人氏(1898-1973)が1970年代に著した研究書で、中国医学の中でも特に本草学の文献を整理した集大成です。岡西氏は京都大学結核研究所病院で執筆を続け、出版を見届けることなく亡くなりました。その後、1977年に『本草概説』は出版され、中国の本草学研究に大きく貢献しました。今年1月、岡西氏の没後50年を迎え、その翻訳版が出版されたことが久保准教授の受賞理由の一つとなりました。
久保准教授の専門は本草学で、岡西氏が築いた書誌学的基礎と研究手法を受け継ぎ、牡丹や芍薬の薬用史において重要な成果を挙げています。たとえば、『出雲国風土記』に記される「牡丹」に関する謎に取り組みました。日本には野生の牡丹が存在せず、栽培記録もないため、その正体には諸説ありました。久保准教授は、唐代の官修本草書『新修本草』を手がかりに考証を進め、「牡丹」が7世紀頃まで主にヤブコウジ属植物(Ardisia)を指していたこと、唐代に名と実の対応が変化したことを解明しました。この成果により、『出雲国風土記』の記載が歴史的に矛盾しないことを示しました。
また、漢方薬の八味地黄丸や大黄牡丹皮湯についても、当初はヤブコウジ属植物の根が用いられていた可能性を指摘しました。一方、芍薬については、紀元前7世紀頃の詩歌集『詩経』にその名が見えますが、何を指すかについては古くから議論がありました。久保准教授は、赤芍?白芍の基源が現在の日中で異なることを踏まえ、その歴史的変遷を江戸時代の本草家が残した輸入薬の記録を基に研究を続けています。
【論文】
- 『呉越国 : 10世紀東アジアに華開いた文化国家』(勉誠出版, 2022, pp. 77-104)
- 「中国古代芍薬文献考訳」『自然科学史研究』(43(1): 31-47, 中国語)
なお、同出版社から昨年1月に出版された『与花方作譜:宋代植物譜録循跡』も、2024年度広西科学普及読物コンテストで「優秀賞」に選ばれました。この受賞についてもご紹介します。
◆広西科学普及読物コンテストについて
「2024年広西科学普及読物大賽」は、広西壮族自治区科技庁が「自治区科技庁における2024年広西科普講解、動画、読物コンテスト開催通知」(桂科発〔2024〕78号)に基づいて実施したコンテストです。このイベントは、科学的精神を広く宣伝し、地域での科学知識の普及を目的としています。 専門家による審査とオンライン発表を経て、40作品が選出されました。その中には『与花方作譜:宋代植物譜録循跡』も含まれています。 |
◆著書『与花方作譜』について
本書は、久保輝幸准教授が中国語で執筆した博士論文をもとに、一般読者向けに再編集して出版されたものです。
中国では南宋末(~1279年)までに植物に関する専門書が100冊以上編纂されており、本書はそれらの成立年や編者に関する書誌情報を整理し、思想や相互関係を解明することを試みています。北宋の儒者?程頤の「一草一木に皆理有り。察せざるべからず」という言葉や、南宋の朱熹が唱えた「格物致知」の実践の中で、士大夫たちは観賞植物の多様性に注目し、多くの専門書を著しました。本書は、これらの研究を体系的にまとめた初めての成果です。
全9章構成で、竹や桐に関する譜録、牡丹、芍薬、菊、梅、蘭、海棠などの花卉植物の専門書、さらに茶書?酒書?食用植物に関する専門書を論じています。巻末には、天理図書館所蔵の南宋本『洛陽牡丹記』の彩色影印を収録。また、これまでほとんど知られていなかった貴重な絵画や文物を多数収集し、本書に掲載しました。
本書は、ハーバード大学、スタンフォード大学、ミネソタ大学などの北米地域の大学図書館や、マンチェスター大学をはじめとする英国の大学図書館にも所蔵されています。
- 問い合わせ先
- 横浜商科大学 商学部 総合教養センター
久保 輝幸 准教授(教員紹介へリンク)
- 発信部署
- 横浜商科大学 IR?情報メディア部 大学広報係
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